暇コラム

かいさ〜ん

松村北斗くんの話

筆者は「ジャニヲタ」である。

それも20代も半ばにして、突如目覚めた

遅れてきたオタクである。


男性アイドルというジャンルには、てんで興味がなかった。

それが2019年夏、ふと目にした音楽番組で人生が変わってしまった。

King&Princeの岸優太くんの美しいダンスに「恋心に近い感覚で、欲情を奪われた」※1 のである。


彼のことを好きになったからには、彼のバックグラウンドを知っておかなければならないと、生まれ持った探究心が疼いた。

それからというもの、先輩から後輩、それも当時デビュー前のジャニーズJr.に至るまで顔と名前を覚え、全グループのパフォーマンスを視聴した。


その営みの中で、SixTONES松村北斗くんのことも知った。

いい意味でアイドルらしくない、清洌な顔つきの青年である。

SixTONESというグループは当時のジャニーズJr.の中でも飛び抜けて完成度が高かった。

だから、デビューが発表されたときは、祝いの感情よりも納得感が勝った。

デビューから2年、SixTONES松村北斗くんも活躍の幅を広げ、今や押しも押されもせぬスターになっている。


ああ、すごいなあと思いながらも

担当※2は前述の岸くんなので、本格的に彼にハマることはなく、Twitterのタイムラインに流れる情報を片手間に見る程度にしていた。

シングルが出るんだ、松村北斗くんは映画にも出るんだ、そう思いつつも実際にCDを購入することも、映画館に足を運ぶこともなかった。


その程度の人間が、なぜタイトルに彼を掲げてしまったか。


単純である。

夢に出てきたのだ。


岸優太という男がほんの1秒も夢に出てこないのに、松村氏はあっさりと出演してくれた。

岸を夢に出すべく、インターネットの波の中で情報をかき集め、友人に相談し

枕の下に写真を忍ばせるという古典的な方法まで試したのに、

出演料が0円のせいか1mmも姿を現さない岸。

そんな中、松村北斗くんはオファーせずとも弊夢に出演してくれたのである。

目が覚めて、"松村北斗が夢に出てきた" という高揚感で夢の内容をすべて忘れてしまったほど、私は彼に"夢中"になった。


それから、聞き齧った情報で知っていたフレーズを検索窓に打ち込む日々が始まった。

「朝ドラの稔さん」は、想像以上に清雅だった。

これはペ・スジ以来の国民の初恋だった。

「ライアーライアーの透」

これに関しては相手役の名前が良くなかった。

筆者の本名だったのである。

耳心地の良い低音で名前を囁かれ、あまり好きではなかった本名を好きになってしまった。


YouTubeも見返し、ラジオも聴き、ブログも購読し始めた。

この世の不憫萌えを塗り固めたような立ち振る舞いに、水を得た魚の如し巧みなトーク力。

ブログの絵文字が意外と多いことも(彼は感嘆符も絵文字にする)、アイランドTV※3 時代から変わらない近すぎる自撮りも、なぜか全てが彼の魅力を引き立ててしまう。

40日に1回程度、それも解禁済みの情報しか載せない他人行儀ブログを書く自担※4 と比べ、

松村北斗くんは数日に1回、ちょっとした近況から、ツアーや作品の裏話まで、それも個人ブログでもグループのブログでも楽しく丁寧に綴ってくれる。

自担の近況に飢えて、King & Princeメンバーや親しい先輩のブログまで見に行っている岸担※5 からすれば、

あまりのマメさに情報過多になるほどである。


よくよく考えれば、松村北斗くんのほうがはるかに "タイプ" ではある。

骨張った輪郭、涼しげな目元、180cm近い背丈、よく響く低い声。

ビジュアルだけならまだしも、文学的な言葉選びも、共感せざるを得ない中々の人見知りぶりも、なんだか初恋の人にすら似ている。

思えば本当はもう、彼にずっと「恋心に近い感覚で、欲情を奪われ」ていたのかもしれない。


SixTONESファンのみんなへ

みんな、急でごめん。

迷惑かけるけど、よろしくお願いします。※6


※1 カミーユ・コローの『コローのアトリエ』に対する松村北斗くんの絵画評。あまりにも文学的で美しい表現であったため、たびたびファンからいじられている。

※2 ジャニーズ界隈では、いわゆる推しのことをこう呼ぶ。遊廓のような言葉選びだが、簡単にはファンを辞めてはならないという少女たちの精神が現れているようで好みのフレーズだ。

※3 ジャニーズJr.が撮る短い動画の配信媒体のこと。

※4 「自」分の「担」当のこと。ジャニーズ用語。本ブログでは岸優太くんのことを指す。

※5 「岸」優太を「担」当としている人達のこと。ジャニーズ用語。

※6 SixTONESオールナイトニッポンサタデースペシャル 2021年12月25日放送回より。体調不良で音楽番組の生放送を休んだ松村北斗くんがSixTONESのメンバーに送った真面目なメッセージだったが、メンバーの田中樹くんが「気色悪い」と言ったことでネタと化してしまった。